家出令嬢ですが、のんびりお宿の看板娘はじめました


「……ここに帽子があるの、知ってたんですか?」

「ああ。そのあとであの女性とばったり出会った」

「だったらそのまま教えてあげれば……」

「君のいい仕事になるかなと思って」

悪びれもせずそう言われ、ロザリーは考え込んでしまった。
たしかに仕事にはなるが、ロザリーは別にこの能力で金稼ぎをしたいわけではないのだ。


「でも、最初からある場所が分かっているなら、直ぐ教えてあげればいいじゃないですか。……もし川に落ちてしまっていたら、見つけられないくらい遠くに流されてしまったかもしれません」

ロザリーがうつむいたのを見て、ザックは若干ムッとする。

「何が気に入らない? べつに君は今回の失せもの探しで金をとるわけじゃないだろう?」

「でも、嘘をつくのは苦手です。なんかこう、居心地悪いというか」

胸のあたりがキリリと痛んで、ロザリーは右手で心臓のあたりを押さえる。
ザックはため息をついて、その手に向かって指差した。

「……心苦しい?」

今の気持ちを言い当てる、適切な言葉だった。
よくわからずにいた感情が、言葉と絡みついて、ようやく自分のものとなった気がした。