チェルシーにやり込められて、ランディは黙り込んだ。
チェルシーは二十三歳で、十六歳からずっと切り株亭で働いている。おかみさんとふたり、室内清掃や、かき入れ時の食堂のウェイトレスをやっていた。
おかみさんがいなくなってからも宿が清潔なままなのはひとえにチェルシーのおかげだ。
しっかり者で物おじしないので、年上のレイモンドやランディにも平気で食って掛かっていく。
ランディはそのあたりが気に入っているようで、困っているのかと思えば表情は喜んでいる。
すべての動作が早いチェルシーは一足先に食べ終え、「先に仕事に戻っているわ」と片付けに向かった。
ロザリーは焦って一気にかっ込み、そしてむせる。慌ててランディが背中をさすってくれた。
「慌てることないよ。チェルシーは食うのが速いんだ。今の時間はお客少ないから大丈夫」
「すみませぇん。ごほっ、ごほっ」
「ほら、水だぞ」
脇から手が伸びてきて、「ありがとうございます」と受け取って、その匂いが水ではなく蜂蜜酒のものだと気づく。
「違います、これ、お酒で……」
慌てて顔を上げれば、そこに立っていたのはザックだった。
「気づいたか。はは」
「ざ、ザック様!」
ロザリーの胸がまた高鳴る。どうしてだろう、ザックを見ると心臓の奥のほうが変な動きをする。



