「でも、でも……こんなのじゃないもん。僕のコインはキラキラしていて、すっごく格好いいんだ。こんな真っ黒な石ころなんかじゃない」
ボビーは信じられない、というように首を振ってやがてうわあああん、と泣き出した。
父のゲイリーは、オロオロと辺りを見回すばかりだ。
同じく食堂に陣取っていたケネスは、眉をひそめる。レイモンドも、洗い物の手を止めてやって来た。
「うるさいぞ。食堂の客に迷惑だ。どうしたんだ?」
「記念硬貨が見つかったのです」
ロザリーの声に、ケネスも立ち上がって寄ってくる。ロザリーを追い駆けてきたザックもそこに加わった。
「これはお風呂で変色したのだと思います。仕組みはよくわかりませんが、以前、温泉に入ってネックレスを変色させてしまった人を見たことがあります。おそらくですが、この記念硬貨も、硫黄のお湯に触れて変色したのではないでしょうか」
「……しかし、金は変色しないぞ? これは金貨だろう?」
そういうのはケネスだ。
そこにザックが付け加えるように言う。
「金貨はすべて金だけで作られるわけじゃない。合金だ。とはいえ、普通ならばたかが一日で変色するようなはずはないが。銀や銅の含有率が高ければ硫化水素と湿気で一晩で変色することはないわけじゃない……と思う」
どうやらザックには詳しい知識がありそうだ。経験だけで語ったロザリーはほっと息をつく。
対してボビーは絶望の表情だ。



