家出令嬢ですが、のんびりお宿の看板娘はじめました


「あ、おい!」

あとからザックが追いかけてくるのがわかったが、確かめたいと思ったら足が止まらない。
一直線にボビーたちがいる食堂へと向かった。

「お姉ちゃん、どうしたの?」

「ボビー君、袋の中をもう一度見せてください!」

「え? どうして? 袋の中なら何度も確かめたし」

「いいから」

机の上に、すべての宝物を広げてもらう。匂いを嗅ぎながらそのうちの黒ずんだ小石――変色した硬貨を見つけ出す。そのうちに、ザックが追い付いてきた。

「おい、いきなりどうした……」

「やっぱりあった。これです。よく見てください。記念硬貨です」

ロザリーが拾いあげたのは、小さな黒く平べったい石だ。
しかしよく見ればこれは石ではない。黒ずんで変色したコインだ。よく見れば、ちゃんと国王陛下の顔も文字も刻まれている。

「嘘だよ。記念硬貨って金ぴかのキラキラなんだよ? こんな黒いのじゃない!」

「でも見てください。ここにちゃんと在位三十年と書いてあります」

袋にはない、というボビーの言葉をうのみにしていたこともあり、ロザリーも色で判別してじっくり刻印までは見ていなかった
だから、気づかなかったのだ。
コインは最初からずっと袋の中にあった。ただし、自ら色を変えていただけだ。