家出令嬢ですが、のんびりお宿の看板娘はじめました

どうやら気持ちが落ち着かずに再び文句を言いに来たらしい。
突っかかっていくランディを止めに入ったのはチェルシーだ。

「ランディ、やめて」

「チェルシー、だって」

「ザック様たちが疑いを晴らそうとしてくれているのよ。邪魔をしてはいけないわ」

若々しいチェルシーとランディとは十歳近い年の差がありそうだが、チェルシーのほうがしっかりしていそうだ。

「疑われてるんだぞ? 悔しくないのかよ」

「悔しいわ。だから信じて待っているのよ。私のために、疑いを晴らすって言ってくれたのよ? その人を信じなくてどうするの」

(チェルシーさん、いいひと)

ロザリーはチェルシーの言葉にジーンとしつつ、頷いて見せた。それを見たランディはしょげたように黙る。
ボビーが唇を尖らせて吐き捨てるように言った。

「あのおじさんは僕のせいだって言いたいの?」

「いいえ。チェルシーさんが疑われているのが許せないんですよ。あなたも、お父様が盗人って言われたらいやでしょう」

「パパがそんなことするはずないよ」

「彼もチェルシーさんがするはずないって思っているんです。信頼している人が疑われたら誰だって悲しいし悔しいです」

「でも僕だって悔しいよ。大事な硬貨だったのに……」

またもやボビー少年を納得させる手間が加わった。ランディの気持ちもわかるが、子供をあおるのはやめてほしい。
人の気持ちを想像するのは、小さな子供には難しいのだ。まして、自分だって大切なものを失くしてショックで、それに頭がいっぱいなのだから。