家出令嬢ですが、のんびりお宿の看板娘はじめました

「ちょっとベッドをよけてみましょうか。男手もありますし」

じっとザックを見つめると、彼は観念したように「わかった。いいよ」といい、ダドリーとともにベッドをずらす。部屋が狭いので、そう大きくは動かせなかった。

さすがに清潔を誇るチェルシーの掃除も、家具をどかさないと行えないところにまでは及んでおらず、綿埃が落ちているが、これといって大きな落し物はない。

「これは……石ですもんね」

「あ、でも、これも俺の!」

ボビー少年はロザリーの手から平べったい小石を奪うと、腰の宝物袋に戻した。
この様子だと、ボビーは宝物袋の中身の総数は覚えていなさそうだ。

大型の家具の隙間もくまなくチェックしたが、特にそれらしいものは見つからなかった。

「……ありませんねぇ」

ロザリーもわずかに困り果てる。部屋の中にもう少しヒントがあるのではないかと思ったのだ。
今の状況からわかることは、記念硬貨は袋から落ちて転がったりもしただろうが、最終的には袋に戻っただろうということだけだ。

「あんなに自慢しているからだ。無くなっても自業自得だよ」

戸口からの声に振り向くとランディがいて、睨むようにこちらを見つめている。

「さっきのおじさん!」

「宿に着くなり自慢していたじゃないか。ここから王都までは馬車を使っても六時間だ。おいそれとはいけない。皆羨ましがっていたじゃないか。誰が盗んだっておかしくないだろう」