アイザックは十八になり、政務の手伝いをするようになっていた。
彼は彼で、母の姿に心を痛めて医師にも治療を頼んだが、カイラを治す術はわからなかった。
彼女が今も城で保護される理由は今や“第二王子の母である”という一点のみだ。アイザックが国務に必要な存在であれば、母も大事に扱われるに違いないとの思いで彼は国の役に立とうとしていた。
そうして数年が過ぎ、アイザックが二十一歳の誕生日を迎えたころ、第一王子が病にかかる。
この国の王位継承順は、どの王妃の子であれ年齢順である。それは、王位継承にて揉めることのないようにと法で決められたことだ。
目立たないようにしているとはいえ、日頃の政務を見ていれば第一王子よりアイザックが能力的に上なのは明らかだ。
生死の境をさまよう第一王子を見限った人々は、アイザックへとへつらいだす。しかしその多くは、それまで身分の低い側妃の息子だと軽んじていた人々だ。
アイザックは呆れ、失望した。声をかけてくるすべての人に不信感を抱くようになり、冷たい言葉を吐くようになる。
そこに快活だった学生時代の面影はなく、ケネスは弟のような彼を放っておけなかった。
『どうせ王位になど興味がないのだろう? 家出をしないか? アイザック。お母上は大丈夫。お前が生きている限り追い出されることはないから』



