「まあ、俺がいる以上、開放的なように見えても街の中の警備は万全なんだ。護衛がいろんな場所に張り付いているからな。君が見た、黒服の男たちもそうだ。いつ俺を狙う輩が現れてもおかしくないから、見知らぬ旅人には特に留意していた。そうしたらある日、見慣れない男を見つけてな」
ザックはそういうと腕を組みなおした。
真面目な表情で見つめられ、ロザリーも息をのむ。
「どうも君のことを調べているようだった。気になってとっつかまえて話を聞いたら、ルイス男爵……君の祖父に頼まれたというんだ。どうやら、一人旅を許可したものの心配になって人を頼んで尾行させていたようだ」
「おじい様が?」
「ああ。それでしばらくその男を通じてやり取りをしていた。イートン伯爵家の遠縁という立場で話させてもらったんだが、男爵は君を旅に出したのがよかったのかどうか、ずっと思い悩んでいたようだ。年若い孫が縁者もいないような土地で苦労をしてはと心配だったのだろう。旅に出た理由も大方聞いた。君が前に酔っ払って言っていたことは本当だったようだな。事故に遭い、両親を亡くしたのにそれを実感できず泣くこともできない……。感情を取り戻すためにいろいろな体験をしたいから旅に出たい……であってるか?」
「はい」



