家出令嬢ですが、のんびりお宿の看板娘はじめました


「現国王には三人の王子様がいらっしゃると教わりました。私はてっきり、全員同じ王妃様からお生まれになったんだと……」

「残念ながら俺だけが側室の子だ。まあ、普通王太子を生んだ正妃をないがしろにする国王はいない。父がおかしいんだ。だから多少の虐げは仕方がないとは思うが、俺や母も人間なんでね。耐えるにも限界がある。……色々あって、俺は城から逃げ出した。その辺の事情はいつか話すよ」

(いつか教えてもらえるんですか?)

ロザリーは不思議に思ってザックを見つめる。
ロザリーがザックとこんな風に親しくなれたのは偶然に過ぎない。本来なら、辺境の男爵令嬢と第二王子は、顔を見合わせることさえないはずなのだ。

胸がずきりと疼いて、苦しくなる。ここに来る前のチェルシーとの会話が脳内を駆け巡った。

『……望みがないってわかっていたのに、私はこの恋を忘れられなかった』

ずっと、ザックへの気持ちを量りかねていた。
一緒にいると嬉しくて安心するのに、ドキドキして落ち着かなくもなる。
この気持ちにつけるべき名前、今なら思いつく。それは【恋】だと。

(かなうはずもない身分の人だと分かってから、どうして気づいちゃったんでしょう)

チェルシーと同じ、はじまりとともに終わりが見えている恋だ。
切なさで胸が痛くなる。
しかし、ザックはそんなロザリーの心中になど気づきもせずに話を続ける。