家出令嬢ですが、のんびりお宿の看板娘はじめました

「お前も飲むだろ?」

「ありがとうございます」

自分の分も入れてくれていたのだと知って、ロザリーは素直に席につく。
外で冷え切った体を温めてくれるお茶。その香りを堪能していると、レイモンドがぽつりとつぶやいた。

「……ありがとな。チェルシーのこと、気にかけてやってくれて」

「レイモンドさん」

「俺にとって、チェルシーは妹のようなもんだ。だが、今回傷つけたのは俺だ。どうしてやることもできない」

「……チェルシーさんは全部受け入れているようです。きっと自分の力で立ち直ってくれます」

「俺もそう思うよ」

一口お茶をすすって、レイモンドはこの話はこれで終わりとばかりに話を変える。

「それにしても、お前の鼻はすごいな。クリスの背中についた匂いでニールを当てるなんてビックリだ」

「あ、あはは。そうですね。私もびっくりです。そ、それよりこのお茶、おいしいですね」

嗅覚の鋭さについては笑ってごまかすしかなく、ロザリーは慌てて話を変えた。
軽い雑談ののち、ロザリーも部屋に戻って休むように言われたが、ザックが来るかも、とぐずぐずしていると「なにかあるのか?」とレイモンドに不審な顔をされてしまった。

やがて、宿の扉が開く。
入ってきたのはオードリーで、すぐ後ろからザックが顔を出す。
ぎょっとしたのはレイモンドだ。「え、なんで」と言われ、ザックは不満そうに眉を寄せつつ、レイモンドより奥にいるロザリーに視線を送った。