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『山猫族』の“支配領域”は、ヤマト国に四十七ある“領域”中、西側に固まって五“領域”、未優の住む中央に二“領域”、東側に一“領域”ある。

“支配領域”ごとに法律に準ずる“掟”が定められてはいるが、支配“種族”に対する優遇措置が主だった内容であることが多い。
優遇例を挙げると、主な交通手段であるモノレールの運賃が無料になる、という具合だ。

“種族”識別には、生まれた時に付けられる“ピアス”が用いられる。
“種族”ごとに型が決まっており、また、“純血種”は金色、“混血種”は銀色と色分けがなされているため、“ピアス”を見ただけでその者の素性が分かる。

そして、“ピアス”に内蔵されたマイクロチップによって、さらに細い個人情報が読み取れるようにもなっていた。

「……やっぱり馬鹿だな、あいつは……」

ベッドの中で、さきほど鳴り出した小型の追跡装置の受信機を見やり、慧一は独りごちる。
スイッチを切ると、ふたたび眠りについた。

……彼は、朝が弱かった……。