―――ベッドの中で微睡んでいた。

 大きな窓から差し込む麗らかな春の日差しが、ぽかぽかと気持ちいい。

 ふかふかの枕。
 肌触りの良いシーツ。
 そして、まだ甘やかな余韻を残す身体。

 首を巡らせると、桐生さんがシーツに肘をつき、目元を細めて私を見下ろしていた。

「何か食べる?」

 目のやり場に困った私を見て笑った桐生さんは「メニュー持って来るね」とベッドから立ち上がる。

 ホテルはビジネスホテルかラブホテルくらいしか利用したことがなかった。
 煌びやかなシティホテルを一時利用する、そんなことが出来るなんて知りもしなかった。

 全てが高級品で飾られた室内は、ルームサービスのメニューまでも本革が使用されていて、何だか非日常的な豪華さが漂っている。