「乗り込むんじゃなくて。もっと根気強く待てばいいのよ。向こうから出て来るのを待つの」


母親がそう言った。


「向こうから出て来るのを待つってどういう意味ですか?」


ミホコがそう質問した。


相手からヒョコヒョコと俺たちの前に現れてくれるんだろうか?


「あそこは施設よ。施設に入ったら、必ず出て来る」


「あぁ。そうだな。購入者に運ぶためにな」


父親が同意した。


そうか、伸紀とタケトは必ず施設の外へ出るのだ。


そうしないと、購入者の元に行くこともできないから。


そのタイミングで2人を助け出そうと言うのだ。


2人の考えに心が躍るのを感じた。


これなら伸紀たちを助ける事ができるかもしれない。


「施設から出る時はきっと車に乗って出て来るでしょうね。途中で逃げ出したりされないように」


「そうなると、車になにかトラブルが起こって停車してもらうのが一番自然だが……そうそうトラブるなんて起こるはずもないしなぁ」


「それなら事故を起こさせればいいのよ」


母親がやさしい顔してそんな事を言う。