「俺は何も感じなかったぞ」


そう言ったのは翔太だった。


他のメンバーも、あの丘に行ったときに何も感じていないようだ。


すると渉は決心したように面々を見回して、そして大きく息を吸い込んだ。


「俺、霊感があるみたいなんだ」


渉の言葉に誰もが返事をしなかった。


突然のカミングアウトにみんな唖然とした表情を浮かべている。


「だけどそれは強いものじゃなくて、本当になにか感じるっていう程度のものなんだ。


だからあの丘へ行った時も、みんなを止めようとしなかった。変な感じはしたけれど、大丈夫だと思ってしまったんだ」


渉はそう言うと、申し訳なさそうに頭を下げた。


「ちょっと、やめてよ渉」


あたしは慌てて渉を止めた。


そんなの、渉が謝ることじゃない。


霊感があるなんて話には驚いたけれど、だからって渉が悪いことにはならない。