正確にはホチキス止めされた2枚の原稿用紙で、それが床に着地する前にキャッチ。



「あぶないあぶない……」



提出物がどこかに紛れちゃったら大変だもんね。


気付いて良かったと思いながら何気なく目を落とす。


原稿用紙にびっしり埋められたそれは、作文……?


いや、これはあたしもこの間書いた人権の論文だ。


そして、そこに書かれた文字を目にしたあたしは、まるで吸い寄せられるように目が離せなくなった。



ドクンッ……

ドクンッ……


段々と早くなっていく鼓動。



その原稿用紙から目が離せないのは、内容が素晴らしいからじゃなくて。


そもそも中身なんて読んでない。


"見ている"のは、その文字。




……だってこの字は……。


その原稿用紙に書かれていた文字は……。





───ハルくんの字だったから。