こくおうさまのすきなひと

「……、その」

「不安で寝られないのか」

「……はい」


正直に答えると、国王様は上半身だけを起こして、私に向かって手を差し出した。


「そのまま起きていては身体を壊す。眠れなくても横になり目を閉じるだけでも違う。不安ならば私の手を握っても構わないから、おいで」


「え?あの……」

「いいから」


私に向けられ伸ばされた手は、下りそうにもなかった。

慌てて蝋燭の火を吹き消し、寝台へと向かう。


国王様の手の上に自身の手を重ねると、国王様は優しく私の手を包み込むように握った。


大きくて温かな手。

あれだけ不安な思いに駆られていた私の心が、ゆっくりと和らいでいくのが分かった。



寝台に横たわる。

いつもは国王様が隣に寝ているかどうかも分からないくらい、距離があったはずなのに、今はちゃんと国王様が感
じられるほどに近くにいる。


少しかもしれないけれど、心が近くなったと感じて嬉しくなってしまった。


「まだ、怖いか?」


国王様が小さな声で私に聞く。

私は横になりながら、頭を左右に振った。


「……いいえ」

「そうか。ならば良かった」




手はずっと握られたまま。

いつしか、私の意識がどんどんと薄れていく。



私の名を、呼んでいるような気がした。

夢か現実なのか、それは分からないけれど。



愛おしそうな声で、何回も、何回も。


それがとても心地よくて、私の心の中の不安はどこかに消え去っていた。