いや、そんな問題ではなくて……。

そう言いたかったが、国王様は背を向けたまま、こちらに身体を向ける事はなかった。

仕方なく、隣に横になる。

大人3人は軽く寝られるほどの大きな寝台だから、私が横になっても国王様の身体が触れる事はなく、シーツの冷たさがやけにピリリと感じられた。

「おやすみなさいませ、アルス様……」

「ああ、おやすみ」


やがて、規則的な呼吸の音が横から聞こえてきた。

まさか、こんな事になるなんて。
初夜が迎えられないって、これって……。


私の心は複雑だった。


確かに覚悟は決めたけれど、どこかで怖いと思う部分もあって、安心している自分がいる。

だけど、初夜を拒否した国王様に対して、ショックを受けている自分もいて……。



やっぱり、私じゃ不服なんだわ。

いくら国王様といえど、自分の意にそぐわない人を抱くなんて出来ないのよ。


つつ、と涙が流れた。

この先も心は通わないのだと、気付いてしまったから。


この寝台の、国王様と私の間。

この間はいつまでも近付くことはないのだと、そう思ってしまったらやたらと苦しくなった。


枕に顔を埋めて、涙を流す。
声を押し殺して、ただ静かに。