「――失礼します、ミネア王女様」



扉のノックの音が聞こえ、ティアが部屋へ入って来る。

その声に気を取り直し、扉の方を向いた。


「少し休まれましたか?夕食の時間になりますので、移動をお願い致します」

「分かったわ、行きましょう」



今日は国王様が迎えに来る事はないらしい。


仕事が忙しいのか、それとも今日の夜の事で気が乗らないのか。

先程までの事を思うと、どうしても後者の方を考えてしまう。

毎日迎えに来るなんてないって分かっていても、悪い方に考えてしまうのは、この状況じゃ仕方のない事だろう。



食堂へと着き、椅子に座って国王様を待つ。

少しの時間を置いて、国王様はやってきた。


昨日も思ったけれど、国王様の軍服姿はとても良く似合っていて、思わずため息が出るほどだ。

すらりとした手足に、鍛えた厚い胸板がよりその軍服姿を際立たせている。

加えて、目にかかるほどの長い漆黒の髪を軽く横に流し、そこから覗く切れ長の鋭いダークブラウンの瞳に、すっと伸びた鼻筋、形の良い唇。


見た目は申し分ないほどの美男子。

歩く姿も堂々としていて、つい見とれてしまう。


国王様が椅子に座ろうとした時、ばちりと目が合う。

しかし、すぐに視線を逸らされてしまった。