「そんなにぼおっとしていたか、私は」

「ええ、それはもう腑抜けのようです。どうなさったのですか?一体。いつもの国王らしくありませんよ?」

「それは私でも自覚しているのだ。……まさかここまでになるとは思わなかったんだ」


私は頭を抱え、ため息をついた。


初めて会ったばかり。

ほんの少し会話を交わしただけ。

ただ手が触れただけ。



たったそれだけなのに、こんなにも心臓が激しく身体が熱くて仕方がない。


彼女の口から、私の名を呼び愛の言葉を囁いて欲しい。

あの抱き心地の良さそうな身体を、思う存分味わいたい。


どんどんと欲望が膨れていくのが、予想以上に激しくて、逆に恐ろしく感じるくらいだ。



「人生とは分からんもんだな、ロバート。だが、今はお前に感謝しているぞ」

「何をいきなり言い出すかと思ったら。気持ち悪いですね。……さ、行きますよ。お立ち下さい」


ロバートは怪訝な表情を浮かべ、移動するように促す。

立ち上がると、皺になった服を正し、礼拝堂の入り口へと向かった。