「このような状態で、ぐっすりと寝られる訳などないだろう?」

「意外と図太い性格だと思っていたのですが、案外繊細でいらっしゃるのですね」


ロバートは笑いながら嫌味を言う。


「全く他人事だと思って……」


「別に女性を知らない訳でもないでしょう?国王になる前は浮名を流していたではありませんか。そんなに思い悩まなくてもよろしいのでは?」


「それとは訳が違うだろう!これは自分の一生を左右するものだぞ!?」


国王になる前、まだ私が気楽に生活していた頃、それなりに心通わす女性が何人かいた。

その時は、先の事を特に考えずただその時の逢瀬を楽しみ、お互いの駆け引きをひとつのゲームとしていただけ。


国王になってからは、今までのような事は出来ないまでにしても、夜会や舞踏会、そんな催し物の中で意中の女性が見つかるものだと思っていたのに。


徐々に顔を合わせ、文を交わしゆっくりと愛を育んでいく。


そんな当たり前な事がないまま、何も知らぬ異国の女と結婚するのだから、思い悩むのも当然ではないか。



「まあそんなに、気を落とさずに。まだ会ってもいないうちから決めつけるのは良くありません。もしかしたら好きになるかもしれないじゃないですか」


「それは、……まず、ないだろう」


はあ、とため息が出る。



これから……、一生心通わぬままに、表では仲睦まじい夫婦を演じなければならない。

好きでもない女との間に、子を生さねばならない。



それを考えると、どうしても気が重くて仕方なかった。