助けてやるって、どういうこと?

それまで待っててって……。


はっ!

まさかアレイズ、良からぬ事を考えて……!?


そう気付いた時には、もう遅かった。

馬車の扉はとっくに閉められ、ゆっくりと動き始めている。


馬車の窓から外を見ると、手を振り見送る両親達の後ろで、アレイズが私達の乗る馬車をじっと見つめていた。

その瞳は何かを決意したような、そんな強い輝きを放っている。


だめ、ダメよアレイズ!!

変な気を起こしてはいけない!


馬車の窓を開け身を乗り出し、そう言おうとしたけれど、馬車はスピードを速めてアレイズ達の姿が小さくなっていく。

加えて、危ないですから、と向かいに座るティアに、引きずられるようにして席に戻されてしまう。



気持ちが落ち着かない。

胸元で重ねた手が小刻みに震えている。


アーハイムでの生活の不安と、アレイズが放った意味深な言葉への不安と。

様々な不安が頭を駆け巡って、どうしようもない。



……ああどうか。

どうか私なんかの為に間違いを犯さないで欲しい。


私は所詮、国の道具に過ぎないのだから。



私ひとりが我慢すればいいだけの事。


それでみんな幸せに暮らせるのだから――……。