次に私がアレイズの近くへと行くと、アレイズは仏頂面で私を睨むように見た。

その瞳に一瞬怯みながらも、私はアレイズに声を掛ける。


「アレイズも、素晴らしい国王になれるようにしっかりとやるのよ」

「当たり前だろ?言われなくてもなってやるさ」


相当、今まで内緒にしていた事が許せなかったのだろう。

珍しく拗ねたように私に言い放った。

けれど、そんな態度も可愛いと思えてしまい、少し笑ってしまった。


「……なんだよ。俺、怒ってるんだからな」

「あ、ごめんなさいアレイズ。ちょっと可愛いって思ってしまって思わず笑っちゃった」

「なんだよ可愛いって。俺を子供扱いするな」

「ふふっ。……じゃあ身体に気を付けて、元気でね」



そう言ってアレイズから離れようとした時、ぐいっと腕を掴まれる。

引き寄せられるようにアレイズの身体の中にすっぽりと納まり、軽く抱きしめられる。


そして、耳もとまで顔を近付けると、小さな声で囁いた。




「必ず俺が助けてやるから。それまで待ってて」




「え?」と、聞き返そうとした時には、アレイズはもう私から離れ、両親の後ろへと行ってしまっていた。


言葉の意味が理解出来ず、呆然と立ち尽くす私に父が声を掛ける。



「どうしたミネア。時間だ、早く馬車に乗らないと」

「え?……あ、そうですね」



そう急かされ、気を取り戻して慌てて馬車へと向かった。