「前向きに、ならなきゃね」

「私もついて行きますから。何があっても私がいますから」


ティアはそう言って、優しく微笑んだ。


アーハイムにはティアも一緒に行く事になっていた。


ティアは私よりも2つ上で、15歳の時から専属の侍女として私の身の回りの世話をしてくれていて、私の一番の相談相手でもある。


ティアももう結婚していてもよい年だし、心に想う人もいるかもしれないと、最初は私が一緒に行く事を断ったのだが、ティア自身がどこまででもついて行くと言ってくれた。


『たったひとりでアーハイムに行き、心細い思いをミネア王女にはさせられません!』

そう、ティアは言ってくれた。



それについてはとても心強く、ありがたいと思う。

けれど、私だけでなくティアの人生までもを変えてしまう事が、とても申し訳ない。


だからこそ強くならなければと思う。


そう長くならずにティアをこの国へと帰し、ひとりでもアーハイムで暮らしていけるように、もっと強くならなければ。



差し出されたハンカチで涙を拭うと、大きく息を吐いて気持ちを切り替えた。


「……さ、準備をしましょう。ぼおっとしている暇なんてないものね」