国王様はその手で、私の頭を撫でた。

なんとなくぎこちなかったようにも思える。


けれど、それがとても愛おしく感じて。

その行為は、ただの慰めでしかないのだとしても。


「アルス様……」


ちょうど私の耳元辺りに手が差し掛かった時、その手に自身の手を重ねた。

国王様は少し目を見開く。


「ありがとう、ございます……」



そう言って、瞳を閉じた。




……本当は、愛していますと伝えたかった。

ここまでしてくれた国王様をお慕いしていると。



けれど、その言葉は言えない。


彼の心の中には、違う人がいるから。

これ以上、国王様を悩ませてはいけない。



――でも、せめてこの手の温もりは。

この刹那の温もりだけは、どうか、私のものにさせて下さい。



それだけで、じゅうぶんだから。

もう、後は何も望まないから。



国王様は、何も言わなかった。


私がその手を下ろすまで、国王様自ら放す事もなかった。