「特別、変わった話でもなかったわ。私が18歳を迎えたから、大人だけのちょっとした話よ」


アレイズは少し不服そうな表情を浮かべた。

詳しく教えてくれないのかと、今にも言いそうだ。


「アレイズも大人になれば分かるわ。それまで楽しみにしていることね」


私はそう聞き返される前に言葉を返し、そしてアレイズを見上げてニコリと笑った。



いつの間にか越された背。


今までは気にする事はなかったけれど、こうやってアレイズを見上げる事も早々無くなるのかと思うと、胸が締めつけられそうになる。


私の笑みにアレイズは、特別な話でもないと判断したのか、それ以上の事は聞いては来なかった。




レイラもその後、私の元へ「お姉さま~!」と声を上げながら駆け寄り、私の胸元へと飛び込む。

勢いで後ろによろけそうになるのをアレイズが寸でで押さえ、レイラを叱った。



「ごめんなさい、お兄さま。だって、早くお姉さまと遊びたかったんだもの」


今にも泣き出しそうな顔で謝るレイラを抱きしめながら宥め、そして部屋へと戻った。


いつものやり取り。
何気ないこの光景が、あと5日間で終わる。


私の心は、複雑だった。

どうして私が……?という気持ちが、いつまでも拭えなかった。



時に運命は残酷だ。


このまま時が止まってしまったらいいのに。


そう、心の中で思い続けていた。