……あの日、城に来たのは紛れもなくセシリアであった。


そもそもセシリアがここまでになったのは、パーティで胸元に挿しこまれたハンカチを、セシリアの元へ返した事に原因がある。


返す、という事は、想いを受け入れられない、という事。


側妃でもいい、とセシリアは覚悟して私に求婚してきたのに、それすらも受け入れられないと言われれば、公爵家の令嬢というプライドもあるのだろう、その怒りは凄まじい。



『私が恥を忍んでここまでやったというのに、どうして受け入れられないのですか!何の為の側妃制度なのですか!?』


『落ち着け、セシリア。そなたも側妃という立場がどういったものか、分かっているだろう?そなたの為には決してならない、冷静になってよく考えるんだ』


『私は冷静です!冷静な頭で考え、それでも国王様の傍にいたいと思ったのです!』


明らかに冷静ではないのは確かだ。

本当に冷静であれば、側妃という道など誰も選ばない。

いくら好きな人の傍にいられるからといって、部屋の外からほとんど出る事を許されない、幽閉されたような状態で、それでも自分は幸せだと言えるだろうか。


『どうして私を拒むのですか!私がここまでしているのに』



『だから落ち着け!セシリア!!』