「聞くほどでもないけど、兄さんは側妃を取らないんだよね?」
「当たり前だ!私はミネアひとりでいい!」
全く馬鹿げている。
仮にもセシリアは公爵の令嬢。
側妃など自尊心を傷つけられるような修羅に、自ら飛び込もうなんてどうかしている。
どうしてこうも面倒な事ばかり起こるのだ。
私はただ、ミネアとのこれからを育んでいきたいというのに。
……いや、これは全て私が蒔いた種なんだな。
私の今までの行いが育って実となり、罰となって降りかかっている。
「――国王、ミネア王妃が戻っておられます。そろそろ国王様も中へ」
大広間から私達の元へとやって来たロバートが、眉間に皺を寄せながら声を掛ける。
いつまでも外から戻らない私達に、業を煮やしたのだろう。
「申し訳ない、今戻る」
心の中は未だ動揺したままだった。
けれどそのような状態では戻る事は出来ない。
なんとか気持ちを切り替えて、ロバートにそう告げ、大広間へと戻ろうとした、――その時。
「それと、国王」
「……なんだ?」
「この会が終わり次第、お話があります。……ラーミア公爵のご令嬢の事で」
地を這うような低い声と、強調されて放たれた"ラーミア公爵"という名に、身体が硬直する。
恐る恐るロバートを見ると、その視線は刺すように痛く冷たい。
こ、こいつまさか……。

