「ほら、早く。一曲だけでいいから踊ってきなって」


国王様は少しためらっていたが、仕方ないといった感じで、中央までエスコートすると私の腰に手を回して、もう片方の手を取り、ゆっくりとステップを踏み始めた。


私も空いた手を国王様の胸元に添え、合わせてステップを踏む。

ダンスはいささか不安だったが、周りで眺める貴族達からは、感嘆のため息が聞こえた。




「随分と上手いな。踊りは得意なのか?」


「い、いいえそれほどでも……。ですがダンスは必要な教養として、かなり教え込まれました」


「さすがだ、ミネア。とても勉強熱心であったのがよく分かる。だが、もう少し寄ってくれた方が、私としては踊りやすいな」


腰に回された手にグッと力が込められ、より身体が国王様に引き寄せられた。



――大きく心臓が跳ねる。



包み込まれるような、国王様の腕の中。

密着した部分から感じられる、国王様の体温。

そして高貴で甘美な香りが、より私の心臓の鼓動を早めていく。