明さんと奏の関係が明らかになった後、あたしは何も言えなかった。


目の前にいる奏は弱弱しく、目に涙を浮かべている。


あたしの知っている奏とはかけ離れていた。


「それ……本当か?」


「本当よ。だからあたしはお金がいる」


グスッとすすり上げてそういう奏。


散々あたしをイジメてきた相手なのに、可愛そうだと感じてしまった。


奏は奏で苦しんでいたのだ。


そう理解した瞬間、なにか心の中が熱くなるような感覚があった。


万引きをしたのは奏が悪い。


だけど明さんのやり方はあまりにも卑怯だ。


それに……少し気がかりな事があったのだった。