見慣れた学生鞄を開けて中を確認する。


ノートや教科書に書かれている名前はすべて浩志のものだ。


あたしは床にペタンと座り込んでしまった。


これは夢だろうか?


昨日からあたしは悪い夢を見ているんじゃないだろうか?


そう思い、頬を引っ張る。


痛みが駆け抜けて思わず涙目になった。


夢じゃない……。


じゃぁ、昨日奏の体に乗り移っていたことも夢じゃないと言う事だ。


あたしは奏になり1日を過ごした。


そして1日の終わりに首を吊って自殺をはかったんだ。


そこまで思い出すと、重たいため息が漏れて来た。


なにがどうなっているのか皆目見当がつかない。


あたしはどうなってしまったんだろう?


浩志になった自分の両手を見つめていると、部屋にノック音が響いた。


「はい……」


小さな声でそう返事をすると、少し間を開けて見知らぬ女性が入ってきた。


30代くらいの女性で白いエプロンを付けている。


床に座り込んでいるあたしを見て驚いた顔をしている。