自分の分くらい支払っておいた方がいいと思い、財布を取り出す。


しかし、レジまで来たとき明さんは伝票をあたしに手渡すと、「先に出てるから」と言って店を出て行ってしまったのだ。


「え、あ……」


声をかける暇もなく、あたしは会計を終わらせる。


もしかしたら、今度会ったら奏が奢るとでも約束をしていたのかもしれない。


それなら明さんが先に店を出ることも納得できる。


財布から千円札を2枚取り出してお会計を終わらせる。


その2千円は、今日ミカちゃんから奪ったものだった。


お釣りをもらい、外へ出る。


「じゃ、家まで送るから」


明さんがそう言い、あたしの手を握りしめてきた。


優しい体温に心臓はドクンッと跳ねる。


誰かに手を握られるなんて、小学生以来かもしれない。


歩いて帰っている間も明さんは楽しい会話を沢山してくれた。