「……こんにちは」


声が掠れてしまった。

美術室に来たのはもう三ヶ月ぶりで、前はどんな顔をしてこのドアを開けていたのか思い出せない。


「こんにちは」


里美さんがちらりと本から顔をあげて言った。


「あ、こんにちは」


遠子ちゃんも前と同じように控えめに微笑んで挨拶を返してくれる。


他の三人は、無反応。


まったく変わらない顔ぶれの、まったく変わらない反応が返ってきて、

がちがちに緊張していた私は拍子抜けした気分だった。


「……どうも、ご無沙汰してます」


マスクの中で呟くと、里美さんは本に目を落としたままこくりと頷いた。

遠子ちゃんは今日も窓際の席で油絵を描いている。


ここだけ時が流れていないんじゃないか、と錯覚してしまうほど、あのころとなにも変わっていない。

毎日ずっと青磁と一緒にいた、あの幸せだったころと。


しばらく待たせてください、と一言言っておこうかと思ったけれど、それぞれの作業に没頭している彼女たちを見ていたら、話しかけて邪魔をするのも悪い気がしてやめた。


後ろの隅っこの机に荷物を置き、椅子に腰かける。

そして、いつも青磁が座っていた席のあたりに視線を向けた。


ここに来れば会って話せるかと思っていたのに、彼はいない。