お兄ちゃんはそこで言葉を切って、小さくため息をついて私を見た。


「……まさか、お前と青磁が同じ高校に通ってるなんてな……。しかも、付き合ってるんだろ?」


私はふるふると首を横にふった。


「仲は良かったけど、付き合ってたわけじゃないよ」


私の答えを聞いたお兄ちゃんが、


「なんで過去形?」


と眉を寄せた。


「……今は、全然会ってないし、話してもない」

「……どうして」

「私が青磁のこと怒らせちゃったから……」


するとお兄ちゃんがさらに眉間のしわを深くした。


「怒らせた?」

「うん……八つ当たりで、無神経なこと言って傷つけちゃった。それから口もきいてもらえなくなっちゃったの」


暗い声で告げると、


「……おかしいな」


とお兄ちゃんが首をかしげた。


「青磁は、昔はなんていうか、思ったことはなんでも口に出すタイプだったよ。特に小学校高学年になってからは、気にくわないことがあれば相手が誰だろうが食ってかかって」

「それは今も一緒だよ。自由奔放で、言いたいことは言うし、やりたいことはやるって感じ」

「そうか。それなら、なおさらおかしいよな」


お兄ちゃんの言わんとすることが分からなくて、私は黙って続きを待った。


「あいつの性格を考えたら、茜に言われたことに腹が立ったんなら、その場で言うんじゃないか? そして、解決したら根には持たない。そういうさっぱりしたやつだと思うんだよな」

「………」

「それなのに、なんで今回は、なにも言わずに無視するようなことするんだろう。青磁らしくないよな」