「違うよ、今は病気ではない、と思う」

「え……」


病気ではない、という言葉に、全身の力が抜けた。

へなへなと床に座り込むと、お兄ちゃんも同じように私の目の前に腰をおろす。


「今は普通に学校に来てるんだよな?」

「うん……」

「じゃあ、治ったんだな。よかった」


強張っていたお兄ちゃんの顔が少し緩んだので、安堵を覚える。


「……俺は中学生になってからはクラブに行ってないから、小学校以降の青磁のことは知らないんだけど」

「……うん」

「クラブのチームメイトとたまたま部活の試合で会ったときに、昔の仲間の話になったりしてさ。そのときに、青磁が中学生のときかな、あいつが病気で半年くらい入院してるらしいって聞いて……」


鼓動が早まる。

半年も入院するなんて、かなり重い病気のはずだ。


私が知っている青磁は、いつも生き生きしていて、きらきら輝いていて、病気や入院という言葉のイメージとは正反対だ。

だから、にわかには信じがたかった。


「そのあとどうなったのかなって心配してたんだけど、しばらくして他のやつから、病気が治って退院したらしいって聞いてほっとしたよ。でも、激しい運動はできないからクラブもやめて、中学の部活もやめて、サッカーからは離れたって聞いて、もったいないなと思ってた」