「違うよ。って色んな人に何回も言ってるのになあ、なんでみんな分かってくれないかなあ」


私は困り笑いで答え、さらに続ける。


「それにね、『もう付き合ってるの?』って、別にこれからもそんな予定ないからね?」

「えー、そうなの? ねえ青磁、どうなの?」

「あー? お前には関係ねえだろ」


青磁にばっさりと切られて、沙耶香は「はーい」と唇を尖らせた。

それでもやっぱり飽き足らなかったようで、今度はまた私に矛先を向けてくる。


「じゃあさ、二人が本当にカレカノじゃないなら、ただ仲が良いだけの友達ってこと?」


友達。その言葉に私は思わず動きを止めてしまった。


我関せずという顔で飄々と歩いている青磁に目を向ける。

こいつと私の関係を『友達』と名づけるのは、どうにもしっくりこない。


「……友達、も違うかな」


独り言のように呟くと、青磁がちらりとこちらを見て、それからどうでもよさそうに肩を竦めた。


「ええ、違うの? もう、どっちなの? 付き合ってるのか友達なのか、はっきりしてよね!」


ばしんと沙耶香に背中を叩かれる。

その拍子にバランスを崩し、よろめいてしまった。


「あっ、ごめん!」と沙耶香が声をあげる。


次の瞬間、「あぶね」と呟いた青磁に二の腕のあたりをぐっとつかまれた。