「東京オリンピックって、たしか2020年開幕じゃなかったです?」
「2020年?なに言ってるんだい、あんた。東京オリンピックの開幕っていったら明日じゃないか」
「明日!?」
萌はいよいよ訳が分からなくなってきていた。あまりにも現実離れした状況に、今この瞬間が本当に現実なのか疑ってしまうほどに萌は混乱していた。そして、確信に迫る質問を、思い切っておばあさんに投げかけた―。
「すみません、今って西暦何年ですか?」
自分が馬鹿な質問をしていることは分かっていた。それでも、萌は訊かずにはいられなかった。おばあさんは少し笑いながら答えた。
「おかしなことを訊く子だねぇ。"1964年"に決まってるじゃないか」
この時、萌は自分の置かれた状況をようやく理解した。と同時に、頭が真っ白になった。これから自分はどこへ帰ればいいのか、そして、これからどうすればいいのか、何もかも分からなくなっていたのだ。
―自分はただおかしな夢を見ているだけで、目が覚めればきっとまた元通りの生活に戻れる
心のどこかで現実逃避だと分かっていても、そう思わずにはいられなかった。しかし、頬を伝う涙が現実であることを萌自身に告げていた。橙色に染まった空だけが、あの時3人で見た空と同じ色をしていた。沈みかけた夕陽が萌の後ろにもう一人の彼女を描き出す。まるで、影絵のように―。
描き出された影はあの時とは違い、どこか寂しげで、そして、小さく、震えていた。
「2020年?なに言ってるんだい、あんた。東京オリンピックの開幕っていったら明日じゃないか」
「明日!?」
萌はいよいよ訳が分からなくなってきていた。あまりにも現実離れした状況に、今この瞬間が本当に現実なのか疑ってしまうほどに萌は混乱していた。そして、確信に迫る質問を、思い切っておばあさんに投げかけた―。
「すみません、今って西暦何年ですか?」
自分が馬鹿な質問をしていることは分かっていた。それでも、萌は訊かずにはいられなかった。おばあさんは少し笑いながら答えた。
「おかしなことを訊く子だねぇ。"1964年"に決まってるじゃないか」
この時、萌は自分の置かれた状況をようやく理解した。と同時に、頭が真っ白になった。これから自分はどこへ帰ればいいのか、そして、これからどうすればいいのか、何もかも分からなくなっていたのだ。
―自分はただおかしな夢を見ているだけで、目が覚めればきっとまた元通りの生活に戻れる
心のどこかで現実逃避だと分かっていても、そう思わずにはいられなかった。しかし、頬を伝う涙が現実であることを萌自身に告げていた。橙色に染まった空だけが、あの時3人で見た空と同じ色をしていた。沈みかけた夕陽が萌の後ろにもう一人の彼女を描き出す。まるで、影絵のように―。
描き出された影はあの時とは違い、どこか寂しげで、そして、小さく、震えていた。



