「お姉ちゃん?」
萌が我に返ると、少年が心配そうな顔で萌の顔を下から覗き込んでいた。目はきらきらと輝き、澄んでいる。
「ごめんね。ありがとう、助かったよ。またね」
それだけ言い残すと、萌は校門の方へと走り出した。ここが一体どこなのか、それを一刻も早く確かめたかったのだ。
「後、元気なのはいいけど、そんな恰好してると風邪引くぞ、少年」
「お姉ちゃんこそ、そんな"変な格好"してると風邪引くよ」
萌は走りながら少年の方に向けて叫んだ。少年もそれに呼応し、叫んだ。少年の言葉に少し引っかかりを感じながらも、萌は少年に向かって大きく手を振り、それを返事とした。少年もそれに答えるように、いつまでも大きく手を振っていた。
萌は校門の前で足を止め、学校の銘板に目をやった。そこには、たしかに"渋谷区立北原小学校"と木の板の上に黒字ででかでかと書かれている。
「間違いない。やっぱりここ、北小だ。でも、あんな大きな木なんてなかったし、それにこんなにボロっちかったっけ?」
怪訝に思いながら、萌は目の前の銘板を見つめ、記憶の引き出しを手当たり次第に開けた。
「そういえば―」
以前、校長先生が話してたことを思い出した。それは、萌の学校には以前、校庭に大きな桜の木があったこと、一度学校を建て直したこと―。そして、目の前には自分の知らない、もう一つの北原小学校―。
「ここ、どこなの?なんなの!?ここ・・・」
混乱と不安が交差する中、萌はまた走り出した。無我夢中で走った。家族が待っているはずの自宅へと。萌はまだ心のどこかで信じていた。そこへ行けば、いつもとなんら変わらない風景があると。暖かく迎えてくれる家族がいるはずだ、と。それだけを信じて、萌は走り続けた。周りからの視線が妙に痛い。必要以上に騒がしくも感じる。それに、周りの風景も萌の知っている風景とは明らかに違っていた。しかし、今、萌の中にあるのは"一刻も早く家に帰りたい。家族に会いたい"ただ、それだけだった。萌は走り続けた。家族が待つ、自宅へと―。
萌が我に返ると、少年が心配そうな顔で萌の顔を下から覗き込んでいた。目はきらきらと輝き、澄んでいる。
「ごめんね。ありがとう、助かったよ。またね」
それだけ言い残すと、萌は校門の方へと走り出した。ここが一体どこなのか、それを一刻も早く確かめたかったのだ。
「後、元気なのはいいけど、そんな恰好してると風邪引くぞ、少年」
「お姉ちゃんこそ、そんな"変な格好"してると風邪引くよ」
萌は走りながら少年の方に向けて叫んだ。少年もそれに呼応し、叫んだ。少年の言葉に少し引っかかりを感じながらも、萌は少年に向かって大きく手を振り、それを返事とした。少年もそれに答えるように、いつまでも大きく手を振っていた。
萌は校門の前で足を止め、学校の銘板に目をやった。そこには、たしかに"渋谷区立北原小学校"と木の板の上に黒字ででかでかと書かれている。
「間違いない。やっぱりここ、北小だ。でも、あんな大きな木なんてなかったし、それにこんなにボロっちかったっけ?」
怪訝に思いながら、萌は目の前の銘板を見つめ、記憶の引き出しを手当たり次第に開けた。
「そういえば―」
以前、校長先生が話してたことを思い出した。それは、萌の学校には以前、校庭に大きな桜の木があったこと、一度学校を建て直したこと―。そして、目の前には自分の知らない、もう一つの北原小学校―。
「ここ、どこなの?なんなの!?ここ・・・」
混乱と不安が交差する中、萌はまた走り出した。無我夢中で走った。家族が待っているはずの自宅へと。萌はまだ心のどこかで信じていた。そこへ行けば、いつもとなんら変わらない風景があると。暖かく迎えてくれる家族がいるはずだ、と。それだけを信じて、萌は走り続けた。周りからの視線が妙に痛い。必要以上に騒がしくも感じる。それに、周りの風景も萌の知っている風景とは明らかに違っていた。しかし、今、萌の中にあるのは"一刻も早く家に帰りたい。家族に会いたい"ただ、それだけだった。萌は走り続けた。家族が待つ、自宅へと―。



