ミニスカJK、昭和へ行く

 どれくらいの時間が経ったのだろうか。遠くの方で子供達の遊ぶ声が聞こえる。長い夢から目を覚ますように、萌はゆっくりと目を覚ました。立ち上がり、軽く身体を掃う。すぐ脇に萌の通学カバンが無造作に転がっている。中身を確かめると、財布や、スマホ、学生証いったカバンの中身も無事だ。しかし、スマホはなぜか"県外"となっている。バッテリーは残り70%を切っていた。
 周りを見渡すと、どうやらここは学校の一角のようだ。しかし、今時の学校にしては珍しく、木造校舎だ。校庭には大きな桜の木がある。その周りでは子供達が元気よく遊んでいるのが見える。
「ここ、どこだろ。小学校かな。てか、この辺りにこんな小学校なんてあったっけ?ちょっとあそこにいる子に訊いてみよ」
身体が酷く重く感じる。萌は桜の木の下付近で遊んでいる子供達の内の1人にゆっくりと近づいていった。桜の木がまるで子供達を見守るように、静かに佇んでいる。
「ねぇ?そこの少年」
「ん?なんか用?」
振り向いたその少年は、上には手編みのセーター、下は半ズボンを穿いていた。上半身はともかく、下半身は少し寒そうだ。しかし、当の少年はそんなことお構いなし、と言わんばかりに元気いっぱいだ。"子供は風の子"とはよくいったものである。
「ここって小学校、だよね?」
「そうだよ」
「ちなみに、なんていう小学校?」
「北原小学校だよ」
それを聞いた萌は思わずドキッとした。萌の自宅近くに北原小学校はたしかにある。萌もかつて通っていた母校だ。知らないはずがない。が、しかし、萌の知っている北原小学校とはまったくの別物だったのだ。萌は徐々に言い表せない、妙な胸騒ぎを感じ始めていた。