「・・・苦しい」

そう、ぽつりと漏れた。


ずっと泣かずに来たのに。

泣きそうになっても、その涙を流す事は決してなかったのに。


つつ、と頬を涙が伝った。


泣き顔を見られたくない私は、ナディにその顔が見えないように、窓を開け少し身を乗り出して空を眺めた。


濡れた頬は風に吹かれてひんやりと冷たい。



でもどうして?

最初はこんな気持ちになる事なんてなかったのに。


私は恋を知らない筈なのに。

人を好きになるという感情がよく分からない筈なのに。



だけど、こうやって胸を痛めているのは。


こんな苦しい想いを抱くのは。