殿下に正妃にすると宣言された次の日、今まで贈られたことのない花束が贈られてきた。

それは幾重にも花びらを重ねた、オレンジ色と赤色の美しい花。

とても可憐な花である。

そしてその花束と共に、ある本も一緒に贈られたのだった。

殿下の突然の変化に、私は戸惑いを隠せない。


「これはラナンキュラスですね。けれどどうしたのでしょう、いきなり。今までこんな華やかなお花を贈る事はなかったのに」


「・・・そうよね。一体どうしちゃったのかしら。そしてこの本・・・」

そう言ってやたらと厚い本をナディに見せる。

ナディはその本を見ると、ハッとした表情を浮かべた。


「それ、花言葉の書かれた本ではないですか?・・・もしかして。申し訳ありません、貸して貰えますか?」

ナディは私が持っていた本を手に取ると、ペラペラとめくる。

そしてあるページでめくるのを止めると、瞳を左右に動かしそして、妙に納得したように大きく頷いた。


「・・・ああ、そういう事ですか。今まで贈られていた花にもちゃんと意味があったのですね」

「どういう事?」

「ここをご覧ください」


そのページは今まで贈られてきたクローバーとシロツメクサのページ。

そこには、こう書かれている。


『クローバーの花言葉 私のものになって』

『シロツメクサの花言葉 私を想って』