――バッシーーーン!

 威勢のいい挨拶と共に、背中に電撃のような衝撃が走った。

「うあ!」っと痛みに仰け反るあたしの隣で、凱斗も「ぐっ!?」っと声を出して顔を歪めている。

 ふたり同時にバッと振り返ると、そこには琥珀色の目の美少女が、両手をヒラヒラさせている姿が。

「……やだ、なに!? あんたらの顔、悲惨すぎて怖っ!」

「亜里沙ぁ……」

「ちょっとヤメてよ。ふたり揃って、腐りかけのゾンビみたいな顔してこっち見ないで。どこの墓地から復活してきたのよ」

「俺はバイオハザードか!?」

 噛みつくように怒鳴る凱斗に向かって、亜里沙は動じる様子もなくサラッと髪を掻き上げる。

「どうせ考えても仕方ないこと、一晩中ねちねちねちねち考えてたんでしょ?」

「藤森、お前なあ!」

「そういう、梅雨時の洗濯物みたいなジメった態度、やめてくんない? あーウザ」

 形のいい鼻からふんっと息を出し、冷めた目で亜里沙はズケズケと言い続ける。

「あたし、言ったじゃん。あんたの責任じゃないって」

「いや、でもそれは……」

「なによ? べつにあんたが彼女の首絞めたわけでも、ナイフ突き刺したわけでもないじゃん」

「…………」