「カフェラテ、いくらだったっけ?」

 自分の分を払おうと思って聞いたら、凱斗が素っ気なく首を横に振る。

「いい。おごる」

「え? でも、ちゃんと払うよ」

「いらない」

「で、でも……」

「奏、凱斗にも男の見栄ってのがあるんだから、ここは素直におごらせよう」

「藤森は自分で払え」

「なにその差別発言!」

「冗談だよ」

 全然冗談っぽくない無表情で、凱斗はホットコーヒーの紙コップに口をつけた。

 ムスッとした亜里沙もコーラのストローに口をつける。

 あたしもカフェラテを手に取り、ふぅふぅと息を吹きかけて慎重にひと口、飲み込んだ。

 控えめなコーヒーの香りがスッと鼻に抜けて、多めのミルクのまろやかさが、ふんわり口の中に広がる。

 ほのかに甘く優しい味にホッとしながら、チラリと向かいの凱斗の顔を盗み見た。

 こんな場所に凱斗と来るのは初めて。

 お店でコーヒーを飲む姿を見るのも当然初めてだから、すごく新鮮に感じて、胸がトクトク騒いでる。

 できれば、もっと違う形で見たかったな……。