自分の好きな人の顔なのに、予想もつかないことがとても不安で、あたしは傘の柄を強く握りしめた。

「奏、ありがと。ハンカチ洗って返すからね」

「……あ、いいよ。そのまま渡して」

 亜里沙の手がこっちに伸びてきて、ハンカチを手渡す。

 そしてハンカチを受け取ったあたしの手を、そのままキュッと握った。

「…………」

 あたしは目をパチパチさせて亜里沙を見た。

 亜里沙はおどけた顔をしてニコッと笑いながら、子どもみたいに繋いだ手をブンブン振っている。

 まるで幼稚園児みたいに繋いだ手の温もりが、あたしの心までカイロみたいに優しく温めてくれた。

 ハンカチと一緒に、励ましの気持ちも手渡してくれたんだね。

 ほんとに、亜里沙ってば、もう……。

 ああもう、また泣きそうになっちゃうじゃない。

 心の傷を一生懸命に撫でてくれているような亜里沙の手を、あたしは感謝の思いを込めてギュッと握りしめる。

 その力に負けないくらいギュウゥッと強く、亜里沙は握り返してくれた。