ところが数歩あるいた足がピタリと止まって、凱斗は妙に落ち着かない素振りでその場から動かない。 どうしたんだろう? あ、もしかして帰り道分かんなくて困ってるのかな? そう思って見ていると、凱斗は視線を泳がしながらあたしに話しかけてきた。 「あのさ」 「ん?」 「お前、いつも学校に傘持って来ねえじゃん。今度雨降ったら、また俺の傘に入れてやるから」 「…………」 「俺、いつも傘用意してんだ」 突然、しゃべりながら凱斗は身を翻して走り出した。 「奏のために」 …………!