凱斗を見つめ返すあたしの両目がジュンッと熱くなって、鼻先がジーンと痺れる。

 たぶんいまあたしの顔って、赤パンダみたいになっちゃってると思う。

 それでも、凱斗から目を逸らせなかった。

 嬉しさとか、温かさとか、幸せとか、切なさとか、いろんなもので胸がいっぱいになって、はち切れそうだから。

「ありがと、凱斗……」

 泣きそうだから、涙声でそう言うのが精いっぱい。

 ごめんね。おかしなこと聞いてしまって、ごめんね。

 探してくれて、ありがとう。見つけてくれて、ありがとう。ありがとう。

 人と人って、関わり合えばどうしても糸は複雑に絡み合って、苦しみや悲しみを生んでしまう。

 でも関わらなければ、こんな風に好きな人と並んで歩くこともできない。

 自分の心がこんなに色めき立つことを、知ることもない。

「あのさ、実は俺も好きなんだ」

「……え?」

「柿ピー、すっげ好きなんだ。大好物」

「…………」

 関わらなければ、知ることもない。

 自分も柿ピーが好きだって告げる、凱斗の微笑みを。

 好きな人の唇が、『好きだ』という言葉を発するたびに、こんなに胸が切なくざわめくことも。