入江さんの凱斗への想いがあまりに重くて強すぎて、不安になるんだ。

 まるで彼女の気持ちだけが本物で、価値のある物みたい。

 こっちにだってちゃんと価値があるって証明したい。されたい。

 確かなものが欲しい。あの子よりも、誰よりも。

 ……これじゃまるで、ただの競争だ。

 目の色を変えて、欲しいものを奪い合いしてるだけみたい。

「あのさ」

 急に立ち止まった凱斗が、ボソッとつぶやいた。

 あたしもビクリと立ち止まって、軽くうつむきながら身を固くする。

 まるで子どものワガママみたいなあたしの質問に、凱斗が怒っていたらどうしようって怖かった。

「俺さ、さっきコンビニで、茎ワカメ探したんだ」

 自分の爪先を見つめるあたしの目が、無意識に上向いた。

 お見舞いの茎ワカメ? それが?

 凱斗は道の先を真っ直ぐ眺めながら、ポツポツと話し続けてる。

「最初に入ったコンビニには、藤森に教えてもらったお前好みのメーカーのが無くてさ。似たような別物はあったんだけど、俺、それじゃダメだった」

「…………」

「探し回って、結局3軒ハシゴして、やっとのことで見つけたとき、『これだ!』って思った。すっげーうれしかった」

 いったん言葉を切り、凱斗は髪を掻き上げて、ちょっと首を傾げる。

 そしてあたしの方へ視線を戻し、純粋な目で告げた。

「つまりそういうことなんだけど……それじゃ、ダメか?」