自殺という名の地獄

 見慣れたリビングの様子が目の前に広がった。俺の実家だ。そこには俺の他に、母ちゃんと、父ちゃんもいる。そして、そこにはもう1人、見慣れない女性もいた。
「あの女性は、誰ですか?」
「あなたの奥さんですよ」
俺はその言葉に驚きを隠せなかった。俺が結婚する?そんな馬鹿な。俺は思わず笑ってしまった。
「コミュ障で、童貞の俺に奥さん?冗談はやめてくださいよ」
「残念ながら、冗談ではありません。それに、私は冗談は苦手です」
男は真顔で、淡々と言った。額から変な汗が滲み出てくるのが分かった。
「だ、だって、現に自殺した日まで彼女なんて本当にいなかったんだ。そんな俺が結婚なんてできるわけが―」
「できるんですよ。それが」
男の言葉が俺の言葉を遮る。男はまた淡々と、事務的に話し始めた。