その願いはなにかって?



優しい彼女はですね、友人のことを大切に思っていたんです。

それはもう、ボクが妬けてしまうほど仲がよくて。



……だから、彼女は友人を殺した男を許せずにいるのです。

殺したいほど、憎んでいるのです。



彼女は自分のその感情に苦しんでいるのでしょう。

手を出すこともできず、許すこともできず。



でもね、彼女にはボクがいます。

ボクが彼女の手となり足となり、ナイフとなってみせます。

その男を殺すためにボクはここにいるんです。

名誉なことでしょう?



あれ、どうかしましたか?

お兄さん、顔色がさっきより悪いですよ?



ええっ、本当ですか?

大丈夫……そうですか……。



あっ、そろそろ消灯の時間ですね。

布団をひいて、寝ましょうか。

お兄さん、よかったら隣でぜひ。



……はぁ、お兄さん、ボクの話を聞いてくれてありがとうございました。

久しぶりにゆっくりおしゃべりできて嬉しかったです。



最後にひとつ、いいですか?

……はい、ありがとうございます。



ねぇ、赤髪の、友人を殺した、あの時の強盗犯のひとりのお兄さん。



ボクね、ずっと────あなたを待っていたんですよ」






               fin.