早足で学校を出たあたしはそのまま会場へと急いだ。


途中で何人かの通行人たちにぶつかったけれど、謝りもせずに進んでいく。


小さな服屋さんの中へ入って行くと、店員さんが「あら、こんにちは」と、おだやかな笑顔を浮かべて言った。


「あの……」


足早に来たので呼吸が切れている。


あたしは深呼吸をして再び口を開いた。


「今日のオークションに参加したいんです」


「あら、またなのね」


店員さんはそう言いながらあたしを更衣室へと案内する。


そして、軽々と更衣室を移動させた。


この前と同じようにドアが現れて、あたしは緊張で心臓が高鳴った。


今日のオークションはなんだろう?


急いで来たからそんな事すら確認して来なかった。


メールを読み直そうかと思ったが、やめておいた。


その答えはこの先にある。


「今日こそ落札できるといいね」


そう言われ、あたしは曖昧にほほ笑んで目の前のドアを開けたのだった……。