マラソンのエントリーシートにサインをしたあたしは、そのまま走って家まで帰ってきていた。


マンマルマラソンについて先生に説明を聞こうと思ったが、部活の邪魔になるので自分で調べることにしたのだ。


距離は42.195キロ。


去年1位になった女性のタイムは2時間15分だ。


あたしはその距離と時間を白い紙に大きく書き、部屋の目に付く場所に張り付けた。


目指すはこのタイムだ。


七島雪歩さんはこのマンマルマラソンに参加した事はないようなので、自分がどこまで走れるかもわからない状態だった。


でも、マラソンまであと2週間ある。


その間に自分の実力をもっとつけて頑張れば、きっと望む順位に近づけるはずだった。


「よし!」


あたしは自分に気合を入れるようにそう言い、持ち帰ってきた体操着に着替えた。


街中をこれで走るのは少し恥ずかしいから、明日マラソン用のジャージを買わかきゃいけない。


そう思いながら、外へ出る。


まずは腕試しに家から学校前を5往復しよう。


片道3キロだから、30キロになる。


途中で信号にひっかかるかもしれないが、ある程度のタイムは測れるはずだった。


あたしは腕時計を確認した。


秒針がキッチリ12を指すまで待つ。


そして、パンッ!と脳内でピストルの音がはじけ、あたしは走りだしたのだった。